事故を起こすとさまざまな責任を問われることになります。責任は大きく「社会的な責任」と「人道的な責任」の2つに分類できます。
なお、「社会的な責任」には民事責任・刑事責任・行政責任の3つの責任があります。
以下にそれぞれどのような責任を問われることがあるのか紹介します。
自動車運転過失致死傷罪(刑法211条第2項)、危険運転致死傷罪(刑法208条の2)、酒酔い運転(道路交通法117条の2第1号)、酒気帯び運転(道路交通法117条の4第2号)等があります。
加害者に求められる刑法上の責任です。人身事故の場合は、自動車運転過失致死傷罪で罰せられることがほとんどですが、飲酒運転や救護義務違反(ひき逃げ)などの場合は、より重い刑罰となります。悪質な場合は、危険運転致死傷害罪に問われる可能性もあります。
交通事故を起こした運転者が受ける免許停止、取り消し処分をいい、行政庁(公安委員会)が行うもので刑罰とは関係がなく、免許取り消し処分を受けたからといって刑罰が重くなったり軽くなったりと影響を及ぼすことはありません。反対に刑罰を受けたからといって行政処分に影響を及ぼすこともありません。行政処分は点数制をとっており、事故の有無に関係なく、道路交通法違反によって点数が加算され、それが一定の点数に達した時、免許の停止や取り消しがなされます。
道路交通法違反(安全運転義務違反)の場合は、行政上の責任が発生し、違反点数が課されます。死亡事故の場合は、最低でも13点の減点となり、即時免許停止となります。
加害者は、被害者の車両修理代、治療費、入通院費等を負担しなければなりません。
また、被害者に後遺障害が認められた場合、その精神的苦痛に対する慰謝料、事故に遭わなければ得られたであろう経済的損失への補償も支払わなければなりません。
死亡事故となった場合は、経済的損失への補償のほか、死亡慰謝料、葬儀費なども支払うことになります。
民法や自動車損害賠償保障法(自賠責法)に基づき追求される責任で被害者に対する賠償責任を指します。国家が与える行政罰や刑罰とは異なり独立して問われる責任ですので、刑事責任或いは行政上の責任を果たしたからと言って免責されるものではありません。
ただ、示談が出来ていなければ本裁判になるところ、民事上の示談が成立していることで執行猶予や略式罰金で済まされるケースがある等、全く影響しないとは言えません。
このため、加害者から示談を急がされるケースもあるようですが、示談は原則やり直しがききませんので、慎重に対処することが必要です。
具体的に、民法709条は「故意または過失によりて他人の権利を侵害したる者は、これによりて生じたる損害を賠償する責めに任ずる」と規定していますが、人身事故、物損事故ともにこの法的根拠によって被害者に賠償する義務が発生します。また、自賠法では第3条に「自己の為に自動車の運行の用に供する者は、その運行によって生じた損害を賠償する責めに任ずる」と規定しています。これを運行供用者責任といい、この責任を免除されるには以下の3つの条件を満たす必要があります。
(Ⅰ)自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと。
(Ⅱ)被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと。
(Ⅲ)自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明したとき。
これら3要件をすべて証明する必要がありますので実際には自賠法の責任を免れるにはごく限られたものになります。
(記事記載要)道路交通法違反(安全運転義務違反)の場合は、行政上の責任が発生し、違反点数が課されます。死亡事故の場合は、最低でも13点の減点となり、即時免許停止となります。